有名な四字熟語の一つに温故知新というのがあります。
古きをたずねて新しきを知る、という意味ですが、この古いことというのが曲者でして、生きるということはまさに光陰矢の如し、端から古いことになってしまうので、新しいことを知るためにどっからたずねてよいか選ぶのに苦労する人も大勢いるのではないでしょうか。
なんとさっき食べた食パン一斤も2時間後には古いこととして宇宙の彼方へと私たちの胎内で処理されるのです。
候補が数限りなくある古きのなかから、いかに『古きよき』をチョイスするか。
そうこうしている間にも、信号は赤になり、横断歩道で立ち往生したまま、私はある一つの考えに行き着いたのです。
『そうだ、私の大嫌いな戦国武将に聞けばいい』。
ハッと気がつくとクラクションを鳴らされ、『ばかやろー、死にてぇのか!』と怒鳴られましたが、最早戦国武将の魂が乗り移っている私には、先に名乗りをあげられたとしか思えず、言って見ればケンカを売られたようなもの。
私は咄嗟に、『我が名は劉備。劉備玄徳。それがしに勝負を挑むとは笑止千万。男なら正々堂々と馬から降りてまいられい』
するとそのベンツに乗った恐面の白いスーツを着た人は颯爽と車から降りて『おめぇ、どこのモンだ』と近づいて来ましたので、私はハッと我に帰り、脱兎のごとく街中を迷走し、うまく撒くことができたのです。それくらい戦国武将というのはすごいものなのです。
古いといえば戦国武将、ビジネスに学ぶのも戦国武将、人使いや部下の育成に関することも戦国武将、戦国武将に学ぶ子育て、戦国武将の死生観、戦国武将の妻に見る男の見極め方、戦国武将の愛した女等々、まさに書店は戦国武将に関する本の戦国時代のようです。
とりあえず本屋に行くと戦国武将に学ぶ本が文庫で出ています。
おまけに活字が大きいので、読みやすく、1時間くらいで学べるのが魅力なようです。
さて、これだけ戦国武将が持てはやされる世の中です。
それなら当店にもありますよ、ということで本日の売れない本は人生の指針を失いかけている方や、大河ドラマの大ファン、台所で庖丁を握る前には必ず自前の鎧兜を装着してしまう方におすすめの一冊です。
本書は名だたる戦国武将がその戦の合間合間にひねり出した歌を集めたものです。
時代別に、応仁の乱前後、東山時代、天文永禄時代、元亀天正時代、豊臣時代、関原以後とに分けられています。およそ90人あまりの武将たちの名歌が収められております。
名武将、武田信玄や織田信長、伊達政宗や毛利元就はもちろん、作者不詳の歌や、日野富子や山名宗全や細川幽斎、筒井順慶、赤星新六、中村文荷斎、木下長嘯子、藤堂高虎、大友宗麟など大変渋い人たちの歌も入っており、戦国武将好きにはたまらない構成となっております。
でもこうしたものは読もうが読むまいが、その気になるかならないかの問題で、戦国武将にもなれるし、戦国和尚にもなれるような気がします。つまり気の持ちようってことですかね。いずれにしろ、お酒の席で戦国武将の話やキノコの話は敬遠されるってことですな。
じゃぁ何の話が聞きたいんだ。自分の胸に聞いてみろ。
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