最近では少なくなりましたが、お店の軒先に非売品が飾られていることがあります。
客寄せだとは思いますが、あまりにもインパクトが強いと中には珍しい物好きのお客様が『これ、幾らだったら売ってくれる?』などと熱意を込めて交渉してはすげなく断られる光景がございました。当店も売り物にはしておりませんが、お客様が目を皿のようにして欲しがる非売品がございます。
これだけは幾ら積まれても決して売ることはできない逸品です。しかも世界でただ一つ。これだけ売れない本を紹介してきたんだ、もういい加減ものすごい怪物みたいな本の紹介があってもいい頃だとお思いでしょう、私もそう思います。
ではとっておきの古書ことばの秘蔵の非売品を紹介しましょう。
それは私のお客様に対するこころ、つまり『ハート』です。
ベタすぎて全然笑えないのも頷けます。本気ですから。
見たことないって?見るものじゃないんです。感じるんですよ!感じて!さぁ!
とはいえ、非売品のごとく、有るのだけれど無いものも私達の世界にはあります。
ただ日常に溢れているにも関わらず、あまりにも漠然としすぎているため、捉えどころがないせいでまさに非売品のようなポジションに自らを置くことになってしまうもの。
それが『死』です。そこで本日の売れない本はいまブームの『死』の本。タブーであるのは語りえようがないからで、語ったところでみんな死んだことがないもんだからまさに触れれば『語るに落ちる』。
ではこの本には何が書いてあるかというと、多分『死』のことが書いてあるのでしょう。
じゃぁ、『死』の何が書かれているのかというと、おそらく何も書かれてはおりません。ここに書かれているのは生きている人間の『死』についてのあこがれや恐怖、イメージ、儀式や風習です。本の紹介としてはきっとその目次の内容を書かなければならないのだとは思いますが、いかんせん、そんなことを書いたところで、この本が売れるだけ。
古本屋のブックレビュー?くそくらえ!
そんなつまらない『死』の紹介を私はしたくありません。
『死』については多くの人間が考え、そして考え、考えてきました。時には『死』を体験したという人もおりました。ですが、そう考え、体験しながらも『死』に向かってまっしぐらに進み続け、一回『死』を体験したという人もやがて本当に死にました。今でも死んでいるかもしれません。
かつて死んだ人、今も死に続ける人、そしてやがて死ぬ人、これらは同一人物です、という言い方もできます。ところがこうした言い方を言いたいが為に私はこの本を選んだのでもなく、つまるところ『死』について考えれば考えるほど何が何だか分からなくなって、この訳の分からなさを少しでも知りたいが為にそれで明日も頑張ろう、という気持ちになることこそ大事だと私は深く思います。
みんなの心に熱いハートと非売品。これこそ、テレビの地上デジタル化に備えて私達が今こそ取り組まなければならない問題ではないでしょうか。死は生と共に。
売れない度 4%


